■琉球王朝がもっとも重要視した琉球最高の聖地
ウタキとは、神が降臨する聖域のことをいうが
社殿はなく、そのほとんどが山容の美しい山や樹
林のなかにあり、岩石や老樹が神の依代として祀
られている。琉球の始祖・アマミキヨが最初に降
臨したと伝わる久高島と、東方のニライカナイを
望む知念岬に、斎場御嶽が存在する。
三角形の造形は、約一万五千年前におきた地震
による断層のズレとされるが、その神秘さゆえに、
王朝の成立以前から信仰されてきた聖地だったと
思われる。その場にたたずんで見てわかることだ
が、サンコウリが発する神秘性はただものではな
い。自然の造形が、ここまで神を体感できる空間
をつくりだすものかと驚嘆する。そしてその東に、
神の島・久高島が見えるのだ。
琉球が三山時代から統一王朝に移り、基盤を固
めていく過程で、王朝の象徴にふさわしい祭祀空
間を探したと思われる。しかもそれは、琉球の始
祖・アマミキヨが降臨したとされる久高島を望む
場所でなければならなかった。アマミキヨとつな
がっている「儀式」をともなう必要があったから
だ。
(『磐座百選』より一部抜粋)
■琉球の祖神・アマミキヨが初めて来臨した岩礁
琉球の祖神・アマミキヨが初めて来臨したのは
久高島だという。島の東北端にカベール岬とよば
れる岩礁があり、東海のニライカナイからアマミ
キヨが依りついたと伝わる。アマミキヨのアマは
「あなた」の訛りで、ミは「海」、キヨは「人」の
意、つまり「遠い海からきた人」のことだという。
岩礁の周囲には、戦前まで島の三分の一を占める
広大なクバの原生林が生い茂っており、アマミキ
ヨが住んでいたところという意で、カベール(神屋原)
とよばれてきた。
ここは久高島が隆起したとき、最初に姿を現し
たところと言い伝えられ、アマミキヨの来臨伝承
と相まって、長く「霊地」として畏れられてきた。
さらにいえば、子供が生まれたとき、人が死んだ
ときは、カベールに立ち入らぬよう注意をうなが
したという。カベールの存在が人の生死と深くか
かわっていたことを示唆している。
(『磐座百選』より一部抜粋)